蔵のそばで育つ米の物語を味わう。阿部酒造「安田鳥越」の豊かな旨み
新潟県柏崎市に蔵を構える阿部酒造。その土地ならではの個性を一瓶に込める「圃場別シリーズ」は、お米が育った環境の違いをダイレクトに感じさせてくれる、興味深い取り組みです。今回ご紹介するのは、その中でも「里」エリアに分類される「安田鳥越(やすだとりごえ)」です。

ラベルに目を向けると、そこにはどこか懐かしく、穏やかな夕暮れ時の風景が描かれています。このお酒に使われているのは、蔵から最も近い安田地区と鳥越地区で収穫されたお米のみ。まさに蔵のすぐそばにある、ありのままの風景がこの一本に凝縮されています。
お米作りを担っているのは、契約農家であり元蔵人でもある矢島衛氏です。蔵の仕事を知り尽くした人が育てるお米には、造り手としての想いが深く刻まれていることでしょう。今後は阿部酒造がそのバトンを引き継ぎ、自らお米を生産していくといいます。この「安田鳥越」という銘柄には、土地の記憶だけでなく、人から人へと繋がれていく米作りの情景も込められているのです。

グラスに注ぐと、開栓したてならではの清々しくフレッシュな香りが立ち上がります。口に含むと、圃場別シリーズの中でもひときわしっかりとした旨みが広がり、土地の力強さを教えてくれます。フレッシュさと旨みのバランスが心地よく、ついつい次の杯が進んでしまうような魅力があります。
その土地のお米を使い、その土地の人が醸す。当たり前のようでいて、実はとても贅沢な「地酒」のあり方を、この安田鳥越は静かに語りかけてくるようです。今夜はゆっくりと、柏崎の里山の情景に思いを馳せながら、この豊かな旨みを堪能してみてはいかがでしょうか。






